よく行く本屋さんに積み上げられていた鈴木荘一さんの『明治維新の正体』(毎日ワンズ)を読了しました。

子どものころに学んだ薩長からみた明治維新とは,別の視点を示す示唆に富む内容で,一気に読んでしまいました。

徳川慶喜-幕末最高のステーツマン

徳川慶喜といえば,大政奉還をした人物です。
鳥羽伏見の戦いで徹底抗戦を鼓舞したあと,すぐに大阪城を脱出して江戸に帰ってしまった行動のせいか,あまり人気がなく,優柔不断な印象でした。

本書では,慶喜の功績として,フランス式の陸軍を創設,懸案だった兵庫開港の勅許を得て実行し,開国を完成させたことが挙げられています。
そして,大政奉還について,ただ朝廷に統治権を返上しただけではなく,イギリス型議会制制度を導入する意図があった,との点は驚きました。

根拠は,幕府開成所教授の西周が慶喜のために起草した『議題草案』にあるとのことで,
そのなかに,
「立法府議政院を設置し上下二院制とする。上院は1万石以上の大名で構成する。下院は各藩主が1名を推薦する」という骨子があるのですね。

歴史研究家の尾佐竹猛も,「慶喜は当時わが国の憲政の第一人者であり,彼が大政奉還に踏み切った真意は,イギリス型の議会設置が条件であった」と断言している

これが実現していれば,漸進的な改革であり,日本は,薩長が中心となった明治維新とは異なった国になっていたかもしれませんね。

西郷隆盛-幕末ポピュリストの親玉

本書では,西郷隆盛は酷評されています。

西郷は,相楽総三を使って,薩摩御用盗として幕府を挑発して鳥羽伏見の戦いを勃発させます。
その後,相楽総三に赤報隊を結成させ,官軍の先鋒となって年貢半減を喧伝させ,幕府領の民衆から新政府軍は支持を得ます。ところが,年貢半減などは無理な話で,西郷は,年貢半減は赤報隊が勝手に触れ回ったこと,偽官軍だとして,相楽総三は処刑されてしまいました。

 
鈴木荘一
こうした陰謀も冷血も,「敬天愛人」を唱えたとされる西郷隆盛の偽らざる真の姿なのである。
西郷は,『代表的日本人』(内村鑑三)では,新日本の創設者として絶賛されていますし,映画『ラストサムライ』で不平士族の領袖である勝元のモデルではないかとされ,偉人という印象でしたので,意外な一面を見た思いです。
さらに,戊辰戦争は,王政復古を経て明治政府を樹立した薩摩藩・長州藩・土佐藩らを中核とした新政府軍と、旧幕府勢力および奥羽越列藩同盟が戦った日本の内戦(wiki)とされています。が。。。
 
鈴木荘一
奥羽越戊辰戦争とは,新政権の支配者となった官軍が東北軍を完膚無きまでに叩きのめし,その戦利品を配下への食禄として与え,東国を日本近代化のスプリング・ボード(跳躍台)として搾取と隷属の対象にするということだった。

さんざんな言われようですね。

坂本龍馬-日本人同士を殺し合わせた商人

日本史上,最も人気があると言っても過言ではない坂本龍馬。ぼくも大好きで,『竜馬がゆく』(司馬遼太郎)を再読しているところなのですが,本書では酷評されています。

龍馬は薩長同盟を仲立ちしたことでも有名ですが,きっかけは,龍馬が設立した商社,亀山社中が薩摩藩名義で購入した武器を長州藩に運び込むという密輸をあっせんしたことだと読めます。

 
鈴木荘一
わが国最初の商社活動としてもてはやされる亀山社中の商売は,混迷する幕末政局の中で反政府集団に最新鋭武器を売り込み,日本人同士が殺し合う内戦で使用される高性能小銃等の密貿易で高利潤を貪るものだった。
 

まとめ

おすすめ度  ★★★★☆

本書は,とくに慶喜の功績,大政奉還の意義について,新たな視点を提供してくれました。
触れませんでしたが,水戸尊王論が万民平等思想だという点については,やや飛躍があるかなと思いました。
読み物としても面白い内容で,おすすめです。

 

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